ハラミ串とキスフライ
運送会社が荷物を運ぶのに助手席に依頼主を載せて目的地に行くのは違反とかいうコメントはいらないからね。
今日、荷物を運んでくれたおにーちゃんの軽トラの助手席はなんと楽しかったことか。
寡黙な人なんだけどお酒が好きらしくもう何年も通っている立飲み屋でいつも頼むのは「ハラミ串とキスのフライ」だそう。
5杯飲んだら意識を失うほどの濃いチューハイを飲み続けるのは休みの前の楽しみだと。
何年も通っているにもかかわらず常連さんやお店の人と仲良くなるということもせず黙々とひとりで飲む。
常連だけど注文は「いつもの」とは言わず「ハラミ串とキスのフライ」と毎回律儀に頼むらしい。だけどお店に入った瞬間、厨房の方がハラミを焼き始めているんだそうな。
そして私の仕事が終わり荷物を引取りにきてくれて、また助手席に乗り込むと
「はい、どうぞ」
とくれたのはコンビニの袋に入ったペットボトルの紅茶とスムージー。
「俺、ヨメに言われるんっす。飲み物のチョイスがイケてないって」。
いやいや、気を使ってくれたのは十分わかるよ。スムージーで。笑。
「おーありがと。喉乾いてたんだ」と私。
その後、とつとつと話す彼と静かに静かに盛り上がる。
もしかして、私が仕事が好きなのはこういう出会いがあるからかもしれない。
市井の人の日常と生き方。
ハラミ串とキスフライ、5杯であの世にいかれるチューハイ。
私は帰宅してそれを思い出しながら、仕事で作って持ち帰ったカレーを食べながら800円のワインを飲んでる。
幸せだな。
今度、キスは天ぷらにせずにフライにしてみるよ。と彼と約束したんだ。